子午線を 測って歩く 四千万歩 ――千葉県銚子市、佐原市を忠敬ウォーク
犬吠埼灯台 水郷・佐原


●再建の 路線、潮の香 醤油の香――銚子電鉄単線の旅

 2008年2月23日、千葉県を旅した。22日の東京出張の後、千葉駅に移動、首都圏の駅前でありながら4980円の低価格で宿泊できた。
 早朝、総武本線にて千葉から銚子へ移動。銚子電鉄に乗る。JR銚子駅のホームの端が銚子電鉄の停車場になっている。
 銚子電鉄は1990年に京成電鉄系の千葉交通から千葉県内の建設会社に移ったものの、98年に自己破産。県と銚子市が支援することになった。この中で業務上横領事件が発覚、母体の建設業の経営悪化を電鉄名義で銀行から借り入れたこともあったらしい。ローカル感あふれる単線に鉄道ファンも多く、ぬれ煎餅など土産物の販売にも力を入れて経営を支えている。
 銚子駅ホームに立つと、そこから海は見えないものの微かに潮の香が漂う。銚子電鉄のレトロな車両は、醤油会社の工場横を通り、野菜畑の中を突っ切って犬吠埼方面へ走る。
 
JR銚子駅ホームにある銚子電鉄乗り場 銚子電鉄のレトロな車両 犬吠駅と電車
のんびりとした風景にレールが続く 銚子電鉄の「桃太郎電鉄」車両 犬吠駅外観

●早春賦 艦船が引き裂く 親子舟――哀しく蒼い犬吠埼の空と海

 犬吠駅を降り、10分程度徒歩で犬吠埼に至る。崖に囲まれた岩場の高台に真っ白な灯台が立ち、その門前は土産物屋が立ち並ぶ。
 実は、東京に住んでいた学生時代の頃、免許取りたての友人の運転でレンタカーを借りて犬吠崎まで来たことがある。同行した群馬県出身の友人は海に慣れていないのか、磯のフナムシを見て「ゴキブリだ」と騒いでいたことを思い出す。
 私が千葉を訪れた数日前の2月19日のこと、千葉県野島崎沖で自衛隊イージス艦「あたご」と勝浦市の漁船の衝突事故が発生した。1453億円をかけた世界最大級のイージス艦と、親子で操業するマグロはえ縄漁船はあまりにも対照的だ。
 
 
犬吠埼マリンパーク 犬吠埼灯台と土産物店 犬吠から見える君ヶ浜

●水郷の 街が生み出す 忠敬図――歴史と文化が息づく佐原の街並み

 銚子からJR成田線で移動、佐原(さわら)市に降り立った。利根川の対岸・潮来とならぶ水郷の町だ。歴史的な街並みが保存されていることで隠れた名所になっている。
 駅から歩くこと一〇数分で街並み保存地域に着く。レトロな洋館、木造建築が集中し、雰囲気をこわすけばけばしい商業主義のものはない。人工的なわざとらしさも感じさせない。この種の街並みを売り物にした場所には各地にあるが、地域の風景と違和感無く合致していることでは一番だと思えた。
 願わくば、一時的ブームで観光客が殺到して街が荒れることなく、調和のとれた町おこしに生かされることを期待する。
 中心地は、日本地図づくりの功労者・伊能忠敬の旧宅。自ら歩いて日本の実測図をつくっていった偉人である。日本をくまなく歩こうと思ってもかなわず、何かの形を残そうと思ってもこのHPが関の山の私には、眩しい存在である。
 旧宅前の川には「だし」と呼ばれる荷揚げ場があり、観光用の小舟が停まっている。炬燵をしつらえた小舟に家族連れらしい観光客が乗りこみ、水郷めぐりに出発するところだった。
 
      
小野川沿いの柳並木と街並み 千葉県有形文化財・福新呉服店 千葉県有形文化財・土蔵造りの正文堂書店 炬燵つきの舟で水郷めぐり
三菱館(旧三菱銀行佐原支店)英国輸入煉瓦使用の洋館 樋橋〔とよばし〕愛称ジャージャー橋 「だし」と呼ばれる川に突き出た荷揚げ場 伊能忠敬旧宅