湧出量、成分ともに「強い温泉」――群馬県草津温泉
●皮膚病に悩む人が最後にたどり着く

草津温泉は長年アトピー性皮膚炎で悩んでいる人がたどり着いて湯治をおこなう場所だと言う。私も皮膚が弱く、以前にアルカリ泉に入って皮膚が痒くなった経験から、強い酸性の草津温泉の湯を試したいという動機があった。(後に調べると、皮膚の相性とphは単純な関係ではなく、アルカリだから合わないのではなくて他の要素があるらしい)
 前日東京で仕事の打ち合わせがあり、駒形で宿泊。7時の新特急で群馬を目指した。土曜日のことで指定券をとったが車両はほとんど空席だった。乗ること2時間半、長野原草津口からバスで草津町へ。
 著名な温泉なのでもっと開けた場所を想像していたが、ずいぶん山を登っていく。草津に着くとそれまで荒涼とした風景が一変して賑わいのある明るい温泉街が目に入る。

草津温泉の中心・湯畑 熱い湯の底に「湯の花」の結晶 湯畑からの湯は滝となって注ぐ

 
 
● 圧倒的な湯量、熱量、この迫力

 草津の中心は、湯畑。熱湯が湧出し、温度を下げるため木の樋を通している。その際に硫黄などの成分が付着して「湯の花」が採取できるので「湯畑」と呼ばれる。
 有名な「湯もみ」は湯畑にある「熱の湯」でおこなわれる。もともとはハードな荒療治的な入浴法である「時間湯」 の準備運動を兼ねたものであったらしい。
 草津はどこにいても町中が硫黄の匂いに包まれている。何しろ地名の由来がクサト=臭処(くさいところ、の意味)だと言う。強力な酸性の湯が流れ出すため、周囲では作物もできず、川は「死の川」、下流にわざわざダムをつくって石灰を投入して酸性を中和してから下流に放流しているそうだ。
 湯畑から温泉街を通って西の河原に向かい、千人風呂の異名をとる大型露天風呂を目指す。
  

樋から落下するお湯を
下から見たところ
いたるところで源泉が湧き出す西の河原 西の河原の露天風呂

       


●これほどの 幸せはなし 露天風呂 

 西の河原はいたるところから源泉が湧き出し、独特の風景。遊歩道の突き当たりに有名な大型露天風呂「千人風呂」がある。入浴料500円、男女別、洗い場はないのでシャンプーや石鹸は使用不可。中へ入ると、思わず感嘆の声をあげるほどに広い。まるでプール。
 木の樋から流れ落ちるものがあったので「うたせ湯」かと思って肩に浴びるとこれが水。よく見ると、この露天風呂は上流からもうもうと湯気を上げる湯の川が流れ込んでくる構造になっていて、それを適度に埋めるために水を注ぎ込んでいる。
 この時、外気温は5度前後、冷たい風が心地よく露天の醍醐味を満喫。視界に入るのは人工的なものは排除され、樹々と岩肌と山並み、あとは真っ青な空。風呂は写真に撮れなかったのでこのページには掲載していないが、気になる方は「草津温泉」か「西の河原」で検索されたい。
 この旅は草津宿泊はなく、入浴だけして帰阪する。「地蔵湯」など、街中にいくつか共同浴場があり、こちらは無料で入れる。湯治客として滞在するアトピーの若者たちは、もっぱらこうした無料の湯を利用しているらしい。私の滞在は短かったが、草津温泉は強力な存在感を発揮していることがよくわかった。